音楽の友 (2012年 11月号)

パリを拠点に活躍するピアニ ス ト菅野潤の「ドビュシー ・プロジェクト」 第2 夜は、「室内楽 コンサ ート〜ソロ 、 デュオ、トリオで聴くドビュッシー」として開催さ れた。「スケッチ帳 から」での 菅野はタ ッチとペダリングを特に工夫し、 この 作曲家独特 の音色の濃 淡 や、漂流する響 きの 妙味を表した。 ダニエル・グロギュラン( vc)と組 んだ「 チェロ・ソナタ」では、渋い表現が際立ち、その節回しには深い味わいがある。「ヴァイ オリン・ソナタ」については出演者の都合により、 ヴァイ オリニストに は小林美恵に代わったが、彼女のシャー プな語り口と、菅野の柔らかな響きは、音楽的な揺れを伴いながら、見事に調和している。菅野、グロギュランとピエール・アモイヤル(vn)による「ピアノ三重奏曲」は、洗練された美しい流れで弾き進められた。明るく爽やかな曲想が丁寧に描き出され、ヴェテラン3人の円熟味がにじみ出ていた。

(9月20日・浜離宮朝日ホール) 原 明美