Archive for June, 2012

ショパン(2012年6月号)メシアン: 幼子イエズスに注ぐ20のまなざし

菅野 潤は、桐朋学園大学とパリ国立高等音楽 院に学び、長い間ヨーロッパで演奏活動を行な い、教鞭もとっている。現在もパリを拠点とし ている。このアルバムでは、20世紀フランス を代表する作曲家、メシアンの長大な作品《幼 子イエズスに注ぐ20のまなざし》を収録。菅野は、メシアン夫妻に招かれてパリに渡り、イ ヴォンヌ夫人らに学び、日本でのリサイタルで もメシアンを積極的に取りあげている。さまざ まな“まなざし”を通して描かれたこの作品を、 菅野は極めて多様に表現してゆく。このような 複雑な曲を描き分ける彼の明断な音楽表出はみ ごと。瞑想的な神秘性も示され、時に心を洗われるような気持ちになれるメシアンである。

道下京子

ぶらあぼ(2012年6月号)メシアン:幼子イエズスに注ぐ20のまなざし

フランスものを得意とする菅野潤が、多様なタッチを駆使して奏でるメシアン。 パリに暮らして30年以上になる菅野は、パリ国立音楽院留学当時、メシアン夫人のイヴオンヌ・ロリオのも とで学んだ。この録音にはメシアン自身から直 接受けた指示も生かされているという。 2枚組 で収録された 2時間超の演奏で、天上に 響 く鐘のような音 、心のざわめきをなだめる静かな音、 闇 を切り裂く稲妻のような音と、めくるめく世界 が展開する。ダイナミックで、 繊細。敬虔な力ト リックの実践者であったメシアンの崇高な精神 世界を、心に 寄 り添う生きた音楽で 再 現した功績 は大きい。心を打つ演奏だ。

高坂はる香

音楽現代(2012年6月号)メシアン:幼子イエズスに注ぐ20のまなざし

推薦:菅野は イヴォンヌ ・ ロリオに学びメシア ンにも薫陶を受けた、パリを拠点にして活躍中のピ アニスト。冒頭の「父のまなざし」を聴 くと、な んて柔ら かいメシアンか、と思う。 ドビュッシー的な 響きの世界、 というべきか。メシアンの色彩感豊 かな響きをたい へん丁寧に描 いており、この作曲家の静謐な神秘性の側面を良く伝える演奏だ。激しい曲、 速い曲でも 、テク ニックは確か で、 音楽は余裕を持ってコ ン トロールされ、なによりもまず客観性を保ち、 しかも香 気を持って いる。ゆ ったりとした時間のなかで聴いていたい C D だ 。 厳しい響きの表出も適格だが、 菅野の持ち味はやはり、この 曲集で は、愛に満ちた詩 的な抒情性にこそある だろう 。

倉林 靖