音楽現代(2012年6月号)メシアン:幼子イエズスに注ぐ20のまなざし

推薦:菅野は イヴォンヌ ・ ロリオに学びメシア ンにも薫陶を受けた、パリを拠点にして活躍中のピ アニスト。冒頭の「父のまなざし」を聴 くと、な んて柔ら かいメシアンか、と思う。 ドビュッシー的な 響きの世界、 というべきか。メシアンの色彩感豊 かな響きをたい へん丁寧に描 いており、この作曲家の静謐な神秘性の側面を良く伝える演奏だ。激しい曲、 速い曲でも 、テク ニックは確か で、 音楽は余裕を持ってコ ン トロールされ、なによりもまず客観性を保ち、 しかも香 気を持って いる。ゆ ったりとした時間のなかで聴いていたい C D だ 。 厳しい響きの表出も適格だが、 菅野の持ち味はやはり、この 曲集で は、愛に満ちた詩 的な抒情性にこそある だろう 。

倉林 靖